【設バン小説】貴方に捧げる小夜曲

ときメモGS

聖司先輩誕生日小説。
先輩→大学1年、バンビ→高校3年。
バンビは天使寄りです。

***

2月17日、昼休みに携帯電話を確認すると、一通のメールが来ていた。
彼女からだった。

「放課後、渡したいものがあるので、お会いできませんか?」

場所を3日前のバレンタインデーと同じく駅前広場を指定し、返信する。
いくら大学が市内とは言え、駅前広場の方が行きやすいと思ったし、何より彼女といるところを大学の奴らに見られたくない。

 

放課後、駅前広場へ向かうと、既に来ていた彼女の姿が見えた。
3日前に会ったのだから、別に久しぶりなんてこともないのだが、毎日のように顔を合わせていた高校時代に比べると、久しく思えてしまう。

「すみません、忙しいのに呼び出したりして……」

開口一番に彼女は申し訳なさそうに言う。
3日前に続き、こうして呼び出したことをわざわざ気にしているのか。

「別に……本当に忙しかったら来ないし」

で、何で呼び出したのかと彼女に視線を向けると、

「今日は聖司先輩の誕生日ですよね?はい、プレゼントです」

彼女は鞄から紫色の包みを取り出す。
これが彼女が今日渡すことに拘った理由。
俺の誕生日。

「ああ、なるほど。開けてもいいか?」

彼女から包みを受け取ると、彼女は「はい」と小さく頷いた。
包みを開けると、中からずっと探していた曲の楽譜が出て来た。

「へぇ」
「……どうですか?」

彼女は心配そうに俺の顔を覗き込む。

「さすがだな。なんで俺の欲しいものわかったんだ?ありがとう。大切にする」

と、礼を言うと、彼女は気に入ってくれて良かったです、と嬉しそうに笑う。

「おまえ、まだ時間あるか?」
「はい、大丈夫ですけど……」
「じゃあ、うちに来ないか?誕生日祝いとかで色々お菓子もあるし」

来週から彼女も受験で忙しいのは承知だが、もう少し彼女と一緒にいたかった。

「はい!是非!」

来ると答えてくれた彼女の手を取り、家までエスコートする。
彼女の進路については何も聞いていないが、ひょっとしたら遠くの大学を受験するかもしれない。
だから、こうして会えるのももしかしたら……なんて考えているうちに家に着いた。
母の趣味であるフラワーコーディネイトにより、バラの花で縁取られた自室のドアを開け、彼女を招き入れる。
いつにもまして花だらけの部屋に彼女の視線は目まぐるしく動く。

「お茶とお菓子は用意させたし、早速これを……」

彼女がくれた楽譜を手にピアノへ向かうと、

「あの、聖司先輩!」

彼女が呼び止めた。

「もう一つ、プレゼントがあるんですけど、いいですか?」
「なんだよ?」

もう一つのプレゼントとは。
彼女は何も手にしていないのに、と思ったら、鞄と一緒に持っていたサックスを取り出した。

「わたし、いつも聖司先輩のピアノを聴かせてもらってばかりだから……今日はわたしが聖司先輩に演奏したいんです」
「……分かった」

こうして彼女の演奏をきちんと聴くのは文化祭の吹奏楽部の演奏以来だし、以前、吹奏楽部が国際コンクールで優勝したと聞いたときに、一度じっくり彼女の演奏(ソロ)を聴いてみたいと思ったから、彼女からの“もう一つのプレゼント”を受け取ることにした。
彼女は俺にプレゼントした古い楽譜の曲を演奏する。

 

「あの……どうですか?」

プレゼントを渡したとき以上に緊張した様子で彼女は聞いて来る。

「緊張したろ?」
「聖司先輩に聴かせるなら、緊張して当然です!」
「ああ、そうだな。緊張で音が震えていた」
「う……やっぱりダメですか?わたし」

と、肩を落とす彼女の頭にぽんと手を置く。

「この3年間で成長したよ、おまえ。吹奏楽部でコンクール優勝したのも分かる」

すると、彼女はみるみるほっとしたような表情になる。

「良かったです、ほんとに……実はわたし、一流音楽大学の推薦を受けるんです」

彼女の言葉に今度は俺が驚く。
彼女がうちの大学を受けるだなんて今まで一言も聞いたことがなかった。

「クリスマスに聖司先輩が一流音楽大学のコンサートに連れて行って下さって、すごい熱気でいいなって思ったんですけど、自信なくて……。でも、初詣の帰りに聖司先輩が……」

一ヶ月前の記憶を呼び起こす。
初詣の帰り、たまには先輩らしくアドバイスしてやろうと言いつつ、海外留学を彼女にほのめかしたが、まさか……。

「だから、わたし決めたんです。“そういう進路”に挑戦しようって。それに……」
「それに?」

彼女は俺に近づいて、俺の手を取る。

「一流音楽大学なら、聖司先輩と……」
「そうか……」

そっと彼女の手を握り返す。

「待っててやる」
「はい!」

すると、彼女は今日一番の笑顔を見せた。
何より欲しかった誕生日プレゼント。
その音色と共にしっかり胸に刻まれた。

***

時期的なものもあり、誕生日よりも進路の話が濃くなってしまいましたが、音楽で繋がれる先輩とバンビが好きでして。
聖司先輩お誕生日おめでとうございます!