【瑛主小説】スイートバースデーを君に

ときメモGS

瑛誕2019年小説。
誕生日前の下校会話ネタで1年目の話。
瑛くんは普通~友好くらい。

***

7月19日。
今日は佐伯くんの誕生日だ。
ということで、誕生日プレゼントに手作りのクッキーを渡すことにした。
バイトもまだ始めたばかりで高いものは買えないし、折角だからちょっと頑張ろうかなって。
レシピはマスターに教わったし、家族や遊くんにも味見してもらって大丈夫だったけど、スイーツの腕前がプロ級の佐伯くんに渡すのはやっぱり緊張する。
でも、折角作ったんだし、と放課後珊瑚礁へ向かった。

「瑛くん、お誕生日おめでとう!」

珊瑚礁に着くと、既に女性客が佐伯くんの誕生日を祝っていた。
学校でもそうだけど、珊瑚礁でも佐伯くんはモテモテだ。

「ありがとうございます、皆さん」

佐伯くんはにこやかな笑顔でお礼を言う。
これも営業スマイルなんだろうけど、やっぱり誕生日だからかいつもよりは嬉しそうに見えた。
そして、その笑顔に女性客は黄色い声を上げる。

「お待たせしました」

マスターが佐伯くんと女性客がいるテーブルにケーキを運んで来た。
けど、すごい数だ。
これは一体……?

「はい、瑛くん、私達からの誕生日祝い!」
「ありがとうございます、今年もこんなに……」

大量のケーキを前に佐伯くんの表情が少し変わった。
大丈夫かな?と思って見ていたら、

「あ、お嬢さん。悪いけど、手伝ってもらえないかな」
「は、はい!」

マスターに呼ばれた。
急いでバイトの制服に着替えて厨房へ向かう。

「すみませんね、今日は瑛は仕事どころじゃなくて」

女性客が佐伯くんを離さないので、仕事がわたしに集中してしまうことをマスターは申し訳ないと言う。

「いえ、お誕生日ですし。毎年こうなんですか?」
「ええ。前にお客さんから瑛の誕生日を聞かれたら、こうなって」
「そうなんですか……」

それでみんな佐伯くんに誕生日祝いにケーキをご馳走していたんだ。
あんなにいっぱいケーキあるなら、わたしのなんて……。

「どうかしました?」
「いえ、何でも……」

と、マスターに言い、店の奥へ向かい、佐伯くんに作ったクッキーを持って帰ろうと鞄の中にしまおうとしたら、

「あれ、おまえ、来てたのか」
「わっ、佐伯くん!」

佐伯くんが店の奥に来たので、慌ててクッキーを隠した。

「何か隠さなかったか?今」
「そ、そんなことないよ!それよりお客さんはいいの?」
「ちょっと休憩。去年よりも増えてさすがにキツいな……じいさんが俺の誕生日お客さんに教えるから」

と、マスターを恨めしそうに瑛くんは言う。

「佐伯くん、どこでもモテモテだもんね……断れないの?」

モテモテも大変だ、と思い、佐伯くんに聞くと、

「断れっこないよ。お客さんのプレゼントなのに。ハァ……」

と、佐伯くんは言う。
商売人らしいというか、お客さんを大切にする姿勢はやっぱりさすがだなと思う。
そういうところがあるから、学校でも彼はきっと自分に対して好意を持っている人を邪険にできないんだろう。

「ところで、おまえは?」
「えっ?」
「今日わざわざ来たってことはさ、ほら……」
「えっ、わたしはその……あっ!」

クッキーをうっかり落としてしまい、佐伯くんに見つかった。

「まさかだけど、俺のか?それ」
「そのつもりだったんだけど、あんなにケーキもあるし、いらないよね……」

わたしはお客さんでも何でもないから……。
だけど、佐伯くんは、

「いる」

と、クッキーを受け取ってくれた。

「えっ?いいの?」

佐伯くんが受け取ってくれるとは思わず、驚く。

「何だよ?俺の誕生日プレゼントなんだろ?」
「そうだけど、でも、わたしのなんて――痛っ!」

頭にチョップが降って来る。

「いいんだよ、おまえは」

と、佐伯くんは言う。

「わたしはいいって?」
「いや、その……貰えるものは貰っとかないと勿体ないだろ」

なんて理由でも、佐伯くんが受け取ってくれるだけで嬉しかった。
わたしのことも受け入れてくれるんだって思えて。
普段は皮肉屋で乱暴なところもあるけど、マスターが瑛くんをああ見えて気の優しい奴だと言っていたのが分かったような気がする。

「開けていいか?これ」
「うん……」

佐伯くんがクッキーのラッピングを開ける様子をドキドキしながら見つめる。
中から貝殻やヒトデ、魚の形をしたクッキーが出て来た。
マスターが瑛くんが小さい頃から好きだと言っていたクッキーだ。

「へぇ、思ったよりよくできてる」
「マスターにレシピ教わって。一応、家族とかにも試食してもらったから、味は大丈夫だと思うけど……」
「そっか。サンキュウ。後で食べるから」
「うん、ありがとう」
「俺が貰ったのに、何でおまえがお礼言ってるんだよ」
「だって……」

受け取ってくれるだけでなく、食べてくれるとも思っていなかったし。
ほんのさっきまで諦めかけていたくらいだ。

「そんなことより、もっと言うことがあるだろ」
「えっ?」
「おまえだけだぞ、まだ言ってないの」
「あ……誕生日、おめでとう」

やっとこの言葉が言えた。
すると、佐伯くんは「よし」とチョップではなく、頭を優しく撫でてくれた。
初めて彼の優しさに触れたような気がして、何だか温かかった。
そんな彼の誕生日を来年も再来年もこれからもずっとこうして側で祝えたらって思った。

***

瑛誕は去年10日も遅れてしまったので、今年こそはと思ったら、今年もチャレ!で出すデンアイ本の締め切りとモロ被りで当日書けるか不安でしたが、何とか書けて良かったです。
瑛くんは学校でも店でもモテモテで大変でも、相手を疎ましがるようなところは一切出さないので、そういうところがプリンスなんやで、もう……!で、誰よりデイジーを大事にして欲しいなって。
瑛くん、誕生日おめでとう!